こんにちは、さこがお送りします。
今回紹介する湾岸諸国7カ国は、主にペルシャ湾の周辺にある国である。1国を除きGCC(湾岸協力会議)という協力機構の加盟国である。また、これらの国は(1国を除き)「レンティア国家」*1と呼ばれる特徴を持っている。レンティア国家とは、天然資源(石油とか)の利益に依存しながら発展している国のことで、共通の特徴を持っている。石油や天然ガスの収入が輸出・国家財政・GDPにおいて大きな割合を占め、外国人に労働力を依存するため人口に対する外国人が非常に多いなどの特徴を持つ。まあ一言で言うと石油王の国。
また、湾岸諸国は石油という共通項以前に、ある程度共通の地理的特徴と歴史を持っている。ペルシャ湾岸は近くにオリエントの大国がありながら、内陸は山と砂漠に遮られており、文明からはやや隔離されていた。しかし、この地域は世界でも有数に真珠生産に恵まれており、かつては真珠が主要産業だった国が多い。その真珠産業の顛末はあまり知られていないが、1916年に日本で真珠の養殖技術が開発されたことから天然真珠産業は壊滅したのである。これにより一時湾岸諸国は著しく衰退するが、間も無く石油が発見され、現在に至っている。
といった前提のもと、石油王の国々を見ていきましょう。
〈湾岸諸国7か国 38.~44.〉
38.サウジアラビア OPECの盟主
左図:OPECの旗
サウジアラビアはアラビア半島の中央に位置する大国で、世界最大の石油輸出量を誇る。その輸出量の多さからOPEC(石油輸出国機構)の盟主的な振る舞いをしてきているが、実際になにか強制力のある権利を持っているわけではない。
やはり経済発展は著しい。少し前まで世界最大(最近中国に抜かれた)であったショッピングモールがある。また、世界一高い建築物(高さ1キロ)のタワーを建設中。
政治的には非常に保守的であることが特徴。現在の国家は1904年に「イヴン・サウード」が建国した王国である。サウード家による絶対君主制を維持しており、要職は王族による独占。政教一致を貫き、憲法はない(イスラム法を基本法と据える)。男女格差が大きく、女性に対する後見人制度や姦通罪があったり、女性の自動車運転が世界で唯一禁じていたりする。また、公開処刑が残る国の一つでもある。しかし近年、新しい王が革新的な政策を進めており、状況は徐々に変わりつつあるようだ。
39.クウェート 国民の9割が公務員
※写真は湾岸戦争のもの
厳密に言うと、国民の94%が公務員、または国営企業に勤めている。ただし、住民のうち外国人労働者が多く、7割が国民でない。
湾岸諸国のなかでカタールに次いで豊かな国。クウェートディナール*2は世界一価値の高い通貨になっている(2018年1月=370円)。その産業は世界一天然資源に依存しており、典型的なレンティア国家。比較的早くオイルマネーの経済発展を遂げた国で、80年代はアラビア半島経済のハブだった。
ペルシャ湾の入り江の奥、チグリス・ユーフラテス川の河口付近にある小さな国。かつては天然真珠の生産国で、その輸出に経済を依存していた。日本が養殖真珠を開発してから、特にクウェートは餓死者が出るほど打撃を受ける。しかし、丁度そのころ石油が見つかり復活。1990年の湾岸戦争ではイラクに攻められる。その背景として、1961年にイラクより後にイギリスから独立したのだが、イラクは独立当初からクウェートがイラクの一州であると主張していた。湾岸戦争では日本が金だけ払って人的支援はしなかったことから感謝リストから外されたことについて、日本では根に持つ人も多い。
世界有数の肥満国である。オセアニア諸島を除くと世界一で、人口の4割がデブである。ちなみに日本は3.7%で世界ワースト2位(WHO.2018)。
世界で最初に海水を真水する海水淡水化を水源として実用化した国(1950年代)。
HDIが高い。美人が多いらしく、モデルの数が湾岸諸国のなかで1番多い。
40.バーレーン 酒と快楽のパラダイス
※画像はイメージです
湾岸諸国の中で最も小さな、33の島からなる島国である。カタールと国旗がそっくり。国土の92%は砂漠で、天然の川も湖もない国。
サウジアラビアと橋で繋がっていて、車で行くことができる。飲酒の規制が無い(とはいえそれなりの規制はあるが)ため、ストイックなイスラム国家のサウジアラビアから、一時の快楽を求めて人がやってくる。その他いろいろな戒律も緩い模様。アラブで1番の自由経済といわれ経済発展が現在めざましく、次のドバイになることが期待される国である。住民の過半数が外国のため、大体みんな英語できる。
かつては、バーレーンの天然真珠は最高品質と言われ、旧真珠採取場が世界遺産になっている。
スンニ派の君主国。2002年からの新しい君主国である。周辺国のようにかつては「首長国」であったが、2011年のバーレーン騒乱をきっかけに王国になる。
イランはバーレーンを自国領であると主張している。
41.カタール アルジャジーラ
バーレーンのやや南に位置し、ペルシャ湾に伸びる半島。湾岸諸国で最も豊かで、購買力平価でみると1人あたりのGDPは世界一(名目GDPで見ると3位)。購買力平価は物価を考慮したもので、例えば北欧はGDPも高いが物価も高いため購買力平価ではやや落ちる。つまり、カタールは世界一物質的に豊かな国であると言える。
石油産出量でクウェートやUAEには及ばないが、天然ガス輸出量は世界トップクラスである。ややこしいが、輸出「量」でみると世界一、輸出「額」でみるとロシアに次ぐ2位になる。また、生産量はアメリカとロシアに及ばない。ちなみに、輸入量の世界一は日本である。
首都ドーハは中東を代表する金融センター。サッカーが好きな人はドーハの悲劇で知っていると思う。ドーハにある報道機関アルジャジーラは中東政府のプロパガンダでもなく、先進国メディアとも違った目線の、独自路線のメディアとして全世界から注目されている。そのユニークさゆえか、最近は周辺アラブ国家から断交されたりしている。OPECも脱退した(カタール外交危機)。一般にシーア派勢力とみられ、イランとは仲がいい。
9割が国民でなく、外国人労働者を大量に受けいれている。住民に占める外国人の割合は世界一。そのため人口増加率は10%と、世界で突出した1位である。
42.アラブ首長国連合(UAE) ドバイとアブダビ


UAE(アラブ首長国連邦)は、首長国*3が7つ集まった国であり、その中の代表的なものがドバイと、政治の中心アブダビである。
実はGDPに占める天然資源の割合が湾岸諸国で最も低い。石油や天然ガスへの依存度が低く産業は多角化している。そして、純粋な経済力ではカタールやウウェートに下回る。
18世紀〜19世紀にはペルシャ湾で海賊が流行し、現在のUAEの地域は、イギリスなどに「海賊海岸」と呼ばれた。この海賊海岸の首長国が地域同盟となりイギリス東インド会社とが協定を結び、「トルーシャル首長国(またの名を休戦海岸)」が成立したことが、現在のUAEへ繋がる。
ドバイはバブルのイメージがあるが、産業の主体は金融や貿易である。ドバイの発展は、9.11テロによってアメリカとアラブの関係が悪化したことにより、アラブ諸国の投資が欧米からドバイへむかったことをきっかけにした。1970年代から20年でGDPが30倍になる。2000年代の経済成長はさらに著しく、巨大な都市に変貌した。巨大な人工島に高級ホテルがびっしり並ぶ「パーム・アイランド」や、世界一高い建物「ブルジュ・ハリファ」がある。しかし、リーマンショックの時期に「ドバイショック」なる打撃を受けている。とはいえ、2020年に中東初の万博を開く予定があったり、まだまだ健在。
一方、アブダビはやはり天然資源が基幹産業。UAE全体のGDPの40%は石油と天然ガスの輸出で、最大の輸出国は日本。日本から見ても(サウジアラビアに次いで)2番目の石油の輸入先である。
治安の良さは世界トップクラス。普通に日本より治安が良いとされている。人口あたりの死亡率は世界一低く、1000人あたり0.9人。
外国人労働者が多く、9割が国民でない。そのためか、人口の男性比率が世界一高く、2.19人の男性に対して1人の女性しかいない。
GDPに占める税収の割合(租税負担率)が世界一低く、1.4%という驚異的な数字(日本は28.3%)。
43.オマーン 海洋帝国オマーン


左:オマーンの国章 右:海洋帝国オマーンの最大領土(NickpoおよびMozzan (talk)から提供)
アラビア半島の南東に位置し、石油輸出ルートであるホルムズ海峡(紅海の入り口)の岬に飛び地がある。ペルシャ湾の玄関として古くから栄え、とくに首都マスカットは中東最古の都市の1つと言われる。
18世紀後半以降は、ポルトガルを追い払って奴隷や丁子などの貿易で発展したオマーン海洋帝国を築く(ただし、奴隷にも財産権があったり西洋のものとはやや差異があるようだ)。帝国として東アフリカ(現在のタンザニアなど)やアフリカの角にも領土を持つ。一時は欧米列強に並んでアラブ世界の大帝国として栄えた。しかし、蒸気船の開発・普及とともに勢力を低下させる。
現在のオマーンは産油国の一つになっており、湾岸諸国の中では比較的控えめな経済力ではあるものの、日本と比べても決して貧しい国ではない。
イスラム教は大きくスンニ派とシーア派の二つに分かれるが、オマーンでは独自の(シーア派にもスンニ派にも帰属しない)「イバード派」と呼ばれる宗派が広まっている。
44.イエメン カートとジャンビーヤ
左:カートを噛む男性(ウィキメディアコモンズを通じてFerdinand Reusから提供・編集) 右:ジャンビーヤ(同じくBernard Gagnonから提供)
厳密に言うと、イエメンは湾岸諸国ではないし、レンティア国家としての特徴も持っていない。しかし、歴史的にも外交的にもこれらの国と関係の深い国ではあるため便宜上まとめて紹介する。
日本が菊と刀の国なら、イエメンはカートとジャンビーヤの国である。イエメンは中東でも石油が出ない国で、加えて近年の内戦のため開発の遅れた、最貧国に数えられる国である。一方で文化的には、現在でも帯刀の習慣(ジャンビーヤ)が残っていたりと興味深い。カートは噛みタバコみたいなやつ。飲酒喫煙ができないゆえの娯楽。
1967年の独立までイギリス保護国であった南イエメンと、オスマン帝国やサウジアラビアに併合された北東部の北部イエメンは別々に独立し、1990年に併合する。1994年には、石油が出る南部が再独立をめぐって内戦になる(2ヶ月)。 現在の「2015年イエメン内戦」は歴史的な南北対立という側面に加えて、サウジアラビアなどのスンニ派勢力とイラクなどのシーア派勢力の代理戦争という側面がある。現政権ハーディ大統領のスンニ派で、フーシ氏率いるシーア・ザイド派が反体制派。
ジェンダーギャップ指数が一番高い(男女格差が世界一大きい、2018年)。
(補)クルド 世界最大の少数民族
アラブにいる、世界最大の国を持たない少数民族と言われるクルド人。リサーチがまだ不十分なので後日更新します。
ということで、実は今回でアジア諸国は全て紹介し終わりました。まあ、いろいろと改良したい部分があるので後日更新するかもしれませんが。いよいよ、次回からはヨーロッパへ!と行きたいところですが、アジアでもヨーロッパでもないある地域へいきます。
もっとこうした方がいいよ!というアドバイス等気軽に軽いノリでコメントお待ちしてます。★やブックマークも嬉しいです。