今回から北アメリカ大陸と南アフリカ大陸の境界、細長い陸地にある小国群にはいります。
今回の大陸上の中米諸国と、次回から2回にかけてカリブ海の島国を紹介していきます。
ほとんどの国で政情不安定な時代が長く続き、政情不安定で犯罪率が高い国がおおいです。その原因の一つとして、アメリカ合衆国の植民地主義・帝国主義の対象となったり
米ソ冷戦の代理戦争の舞台となったりと、歴史に翻弄されていることが挙げられます。
〈中米〉7か国
162.グアテマラ マヤ文明
ティカル遺跡:DEZALBによるPixabayからの画像
グアテマラ人は4割がマヤ文明からの子孫。ボリビア(南米・最終章)に次いでネイティヴ・アメリカンが多い国。
画像のような、密林に突然現れるプラミッドがマヤ文明の象徴である。
マヤ文明が現代に及ぼした影響は大きく、ゴム・ポップコーン・チューインガムなどはがマヤ文明が発祥である。
ちなみにカラーテレビを発明した人物はメキシコ人と言われているが実はグアテマラ出身。その他にも、メキシコとの紀元論争がいくつかある。
西半球1の人口増加率だが、世界で見ると34位(アフリカがやばい)。ほとんどがキリスト教徒だが、マヤの文化と融合した独自の進化を遂げている。
生誕祭前の1週間、首都アンティグアで2キロに及ぶ花絨毯をつくる祭りがある。
言語の面でも、21のマヤ言語を守っている。
163.ベリーズ カリブ海の宝石
ブルーホール。ウィキメディアコモンズより:U.S. Geological Survey (USGS)
世界第2位のサンゴ礁「ベリーズサンゴ礁保護区」を持つ、美しい自然が豊かな国。世界自然遺産に登録されている。画像のブルーホールもその中に含まれる。
一大リゾート地。
国土はグアテマラの西を垂直に切り取ったような、少し歪な形をしている。
他の中米の国は全てスペイン語が公用語であるが、ベリーズは英語が公用語という違いがある。
164.エルサルバドル 中米の日本
ウィキメディアコモンズより:マキリシュアットの花(by JMRAFFi)
知名度は高くないが、意外と日本との関わりが強い国。
・桜とそっくりの「マキリシュアット」という花が国花。
・(日本を除き)はじめて「満州国」を承認した国。
・日本が初めて海外進出して作った会社がある。
…ユサ社(東洋紡との合弁・1955〜)。現在はエルサルバドルの穀物を支配する巨大企業になっている。
1970年ごろまでは中米一の工業国であったが(その頃、「中米の日本」と言われた)、「サッカー戦争」をきっかけに一気に経済が混乱した。
「サッカー戦争」は、隣国ホンジュラスとの経済格差からくる摩擦から、サッカーの試合を火種に開戦した戦争。戦争によってホンジュラスにいた移民が一気に帰国したことで、政治・経済が混乱。極右による白色テロが頻発するようになる。
以後、1980年ごろから左派勢力と内戦状態になり、現在は殺人発生率が世界一の治安の悪い国になっている。
政治的に右派色が強い国のイメージ。
中絶を違法としている国は世界で10カ国以上あり、中南米に多いが、エルサルバドルは特に厳しい。
165.ホンジュラス バナナ共和国
ウィキメディアコモンズより:FedericoZenith-Original upload comment:Image imported from https://openclipart.org/detail/9574/banana-republic-flag
バナナ共和国というと、「バナナなどの一次産品の輸出に頼った不安定な国」といった侮蔑的なニュアンスのある言葉であるが、ホンジュラスがその代表であった。現在のバナナの輸出量・生産量自体はそこそこである。
近代以降、アメリカの「ユナイテッドフルーツ社」によりバナナ農業が導入される。以後、ホンジュラスはバナナ等の輸出用の農業に依存したモノカルチャー経済となった。
エルサルバドルが先に工業化して喧嘩になる(サッカー戦争)。以後、ホンジュラスとエルサルバドルは日本と韓国のような関係に。
国鳥がコンゴウインコ。
166.ニカラグア 世界最長の独裁
ウィキメディアコモンズより:Official photograph published in several Dominican newspapers. August 1952. Copyright expired (D.R. copyright is life plus 50 years)
19世紀に米国人傭兵「ウィリアム・ウォーカー」に政権がとられた過去がある。
その後、1936年〜1979年に「ソモサ」一家のよって築かれた独裁政権時代が「世界最長の独裁」と言われている。独裁政権は共産主義に親密な左派による革命で崩壊。
左派政権下で、親米勢力「コントラ」との戦いである「コントラ戦争」が勃発。米ソ代理戦争の舞台となる。冷戦の終結で紛争は落ち着いたが、その後選挙によって現在も左派政権が成立している。
ニカラグア湖を挟んで国土を横断する「ニカラグア運河」を建設中。香港企業が行っているが、資金面などの問題で現在凍結中。完成すればパナマ運河を脅かす存在になる。
世界でも貧しい国でありながら男女格差が小さく、ジェンダーギャップ指数は2018年で5位。10年間で著しい向上の結果である。こういう所も左派っぽい。
167.コスタリカ 中米の楽園
中米のなかで、経済的にも政治的にも安定しているコスタリカは「中米の楽園」と言われている。
自然も豊かで、地球上すべての生物種のうち5%が生息すると言われるほど生物多様性がある。「環境保護先進国」として名高い。
常備軍を持たないと憲法で定める、数少ない「平和憲法」のようなものを備えている。このような国は日本・コスタリカ・スイスくらい。
実際には非常時徴兵制度を取っている。また、公安警察と言う軍隊に準ずるものがある。
168.パナマ パナマ運河
パナマ運河を渡る貨物船:Arunas BruzasによるPixabayからの画像
太平洋と大西洋をまたぐ世界の交通の要衝、「パナマ運河」は
アメリカによって建設され、1914年に開通する。
1999年までその運営権はアメリカの手中にあったが、パナマに返還される。
以後、パナマ運河の通行料はこの国の経済を支える。1tあたり1ドル39セント。
1人あたりのGDPはメキシコをやや上回り中米一。経済成長率でみても唯一成長を続けている。
香港に次いで広い免税地域を持ち、世界1位の船籍国でもある。
民族的には実はボリビア・グアテマラに次いでネイティヴ・アメリカンが多い国。
以上、お読みいただきありがとうございました。
次回はカリブ海前編・後編に2回に分けて解説していきます。
さこ