こんばんは、さこです。お疲れ様どす。今回は陽気なイメージのラテンの国についてひとことで紹介します。
南欧、というとだいたい地中海沿岸のヨーロッパのことを指す。「ラテン」というイメージとほとんど一致する国々である。「地中海性気候」と言われる、一年を通して温暖かつ乾燥し気候で、オリーブや葡萄(ワイン)の生産に適している。
その意味では、すでに紹介したバルカン半島のギリシャも南欧に含まれる。これらの国は共通点が多い。ギリシャを含めて、イタリア・スペイン・ポルトガルの4カ国はかつて大帝国だった。一方で、いずれの国も経済は近年低迷している。頭文字をとって「PIGS(ブタ)」といい*1、EUのお荷物扱いされている。
また、いずれもカトリックが主流という共通点もある。歴史的にも、カトリックとしての活動で存在感を示す。
こういった共通点も考慮に、6か国+αを紹介してみた。ただし、以前「バルカン半島 後編」で紹介してしまったので、今回はギリシャを除いた南欧諸国を紹介する。
81.イタリア 古代ローマ帝国
かつて古代ローマ帝国があり、世界遺産が世界で一番多い国 (51個)。ちなみに、神聖ローマ帝国は別物であるので注意。
地中海の中心に位置するイタリア半島と、350の島からなる。主な島は、世界史ではイタリア独立の立役者である「サルディニア島」と、レモンで有名な「シチリア島」の2つ。イタリア半島の中央を走るアペニン山脈によって東西に分かれる。火山が多く、紀元前に噴火したポンペイの話は有名。自然も豊かで、ヨーロッパでは最も動物が多様な国らしい。
地方による文化の差異が大きく(地域主義が濃く)、国としてのまとまりは薄い方である。古代ローマ以降はヴェネツィアやらローマやらと言った都市国家が栄え、イタリアという国が出来たのもわりと最近(1861年)。方言が激しく、意思疎通の難しさからイタリア人はジェスチャーが多くなった(ボ~ノ~😋☜ みたいなやつ)。南北の経済格差も大きい(南北問題)。北部がより豊かで、マフィアのイメージは南である。
歴史でいうと、もう一点イタリアを代表するものは「ルネサンス」である。上述の都市国家が栄えた14世紀~16世紀の「ギリシャ・ローマ時代の古典文芸を復興する」運動である。この時代にレオナルドダビンチやミケランジェロといった芸術家や、マキャベリなどの学者が生まれる。
一方、帝国主義や産業革命には乗り遅れた方で、第一次(同盟国)も第二次(枢軸国)も戦争では負けチームに所属。某漫画ではヘタレ扱いされている。
19、20世紀に史上最大クラスの移民排出国になる。ヨーロッパ各地、南北のアメリカに移住。アメリカ(USA)では「新移民」と言われ、映画の「西海岸物語」や「ゴッドファーザー」の背景になる。ハリウッドスターにもイタリア系の人が多くいるのはそういう背景がある。
歴史の話はこの辺で終わる。
今のイタリア人は、カトリックが多いがそんなに信心深くない。
産業でいうと、工業、特に奢多品が有名。フィアット・ランボルギーニ・フェラーリといった高級車ブランド、アルマーニ・ドルチェ&ガッバーナ・グッチ・プラダといったファッションブランドがイタリアのもの。
イタリア料理と言えば、パスタ・ピザ・ラザニア・ジェラート。ちなみにナポリにはナポリタンは無いらしい。
ガラスの製造に使われる長石の生産量世界一らしい。
82.サンマリノ 世界最古の共和国
イタリア北東部にある内陸のミニ国家である。人口わずか3万人強で、8×13キロほどの国土。世界で5番目に小さい。国会の小ささや、自前の通貨を持たずイタリアに依存した各システムを見るとほとんど市ぐらいの感じ。国家とは何か。
1631年に時のローマ教皇が独立を承認し、世界最古の共和国になった。良い感じの街並みは残る、画像のような城塞都市になっている。
内陸とはいえ海にはほど近く、地中海性気候。
リヒテンシュタインと同様、切手が一定の財源になっている。簡単に入国でき、有料で入国スタンプを押してもらえる。これも国家財源の1つ。
人口あたりの自動車所有台数が世界一らしい。
ヨーロッパで初めて建てられた(神社本庁が承認した)神社がある。
(補)バチカン
国土・人口ともに世界最小の国として有名だが、国連に加盟しておらず、日本も国家承認していない。人口は1000人を切る。国土は0.44㎢。
ローマ教皇庁によって統治されたカトリックの総本山。古くはローマ教皇の直轄地「教皇領」として存在し、イタリア統一で脅かされるが、ムッソリーニの頃に国家としての地位を盤石にする。
ちょっと抽象的な言葉が多いのは、著者があんまりよく知らないから。
83.マルタ はちみつ色の城塞都市
地中海の、シチリア島(前述)のすぐ南に浮かぶ3つの島からなる。人口は45万人強。
マルタストーンと言われるはちみつ色の石灰岩がとれ、国内の建物も多くがその石灰岩で作られる。どんな感じかと気になったら、ググって。
国全体が歴史博物館のようになっており、映画「グラディエーター」や「トロイ」もここで撮影した。要塞や古代の建造物など、観光する遺跡が多い。首都バレッタは都市全部が世界遺産として登録されている。2017年に国のアイコンである窓みたいな岩が潰れたらしい。
冷戦の終結の舞台になる「マルタ会談」で有名。
マルチーズ(犬)の故郷。日本人のことをジャパニーズと言うように、マルタ人のことをマルチーズと言う。
マルタ語はフランス語とイタリア語とアラブ語が混じったような、欧州で唯一のセム系言語。ただしマルタ人の多くはバイリンガルまたはトリリンガルで、イタリアのテレビを見る。一方、ヨーロッパのなかで最も非識字率が高い(7%くらい)。
(補)マルタ騎士団
マルタ騎士団はマルタ共和国とは別物の、「国家らしきもの」である。国連には正式に加盟していないが(オブザーバー国家)、約九十カ国が国家承認して外交関係を結んでいる。
特徴は、領土を持っていないこと。イタリアに事務所を持っているだけ。実際には医療活動などNGOに類した活動をしている。
歴史的に十字軍の部隊として誕生したらしい。よくわからんお。
マルタ十字がトレードマーク。
84.スペイン 16世紀の覇権
Cornelis Claesz van Wieringen作 「イングランド沿岸を航行する無敵艦隊」
1500年前後のいわゆる大航海時代は、スペイン・ポルトガルの覇権時代とも見れる。*2 。とくに南米に広い植民地を持っていたので、現在でもブラジル以外の南アメリカの大部分はスペイン語圏である *3。一方、アジア・アフリカに旧スペイン植民地はほとんどない*4。スペイン語は20か国で公用語になっており、世界で4番目に話者数が多い(4億人以上)。
このような植民地の分布は、1494年のトリデシャス条約によって、地球をブラジルの東の国境あたりで2つに区分したことから由来する。東側をスペインの取り分、西側をポルトガルの取り分とした。
「コンキスタドール」と言われる南米征服では、南米の文明をほとんど滅ぼす。
特に、ハプスブルク家の「フェリペ二世」*5の頃が最盛期であった。この頃の海軍を無敵艦隊(アルマダ)と言う。
現在のスペインであるイベリア半島は大航海時代以前、長くイスラムに支配されていた。イスラム文化が西洋文化に融合して、パエリアなど特色的な料理ができる。イスラム支配のため、大航海時代もスペインはポルトガルに遅れをとるが、1549年のコロンブス*6のアメリカ大陸発見により大きく追い上げる。
第二次世界大戦時のスペインは「フランコ将軍」のもと独自のポジションで、政治学的に「権威主義体制」と呼ばれる独裁体制だった。ピカソの絵「ゲルニカ」は、フランコの軍事行動を描いたもの。フランコ政権は第二次大戦後もしばらく(1975年まで)続く。
現行経済はPIGSの一角で芳しくないが、欧州最大の漁業国であり、オリーブ生産量は世界一。ちなみに、ZARAはスペインのものである。
スペイン人は、背はさほど高くないがモテるらしい。パッションの国のイメージがある。闘牛、フラメンコ、カスタネット。あと、「僕のヒーローアカデミア」の「プルスウルトラ」はスペインの国是である。
地域主義が強く、スペインは特に独立運動が盛んである。かつてはバスク自治州で激しく独立運動があった。現在はカタルーニャ州の独立問題を抱えている。
年に一回、トマトで雪合戦する「トマト祭り」がある。
85.ポルトガル 南蛮人
狩野内膳 「南蛮図屏風」
日本に初めて接触した西洋の国はポルトガルだった。キリスト教(カトリック)*7、銃を伝える。日本人は彼らを「南蛮人」と呼んだ。南蛮人はもちろんスペインも含むが、日本に与えた影響はポルトガルが大きい。というのは、前述のトリデシャス条約によりアメリカ大陸の東側へはポルトガルが勢力を伸ばしていたから。日本ではこの影響で、ポルトガル語源の言葉がいくつもある。パン・ブランコ・ビスケット・ボタン・かるた・金平糖・襦袢…と多数にわたる。さらに言うと、南蛮人が伝えたキリスト教を保護し、銃を利用して力を手にしたのが織田信長であった。
日本の他、中国にも最初期に接近し、アフリカ・アジアのいくつかの国は植民地になっている。そもそもスペインに先んじて大航海時代に突入しており、世界最初の近代帝国であると言う見方もある。以上のような大航海時代を経て、アフリカ諸国やブラジルなど、世界中でポルトガル語圏は点在しており、ポルトガル語諸国連合(PALOP)を形成したりしている。ポルトガル語は9か国で公用語になっており、世界で6番目に多い言語(2.5億人)
1975年に植民地を一気に失って、経済は大混乱に至った。
スペインとは同君連合を組んでいたことも多く、関係は深い。言語はスペイン語と似ており、3割くらい通じる。イギリスとは、1373年から「英葡永久同盟」を結び、現在まで続く世界最古の同盟関係。
エッグタルトの発祥。
消臭力のCMの背景にある「ミゲルの丘」がある。
86.アンドラ ピレネー山脈のミニ国家
フランス・スペイン国境のピレネー山脈の中にある、人口8万人弱のミニ国家である。国土は500㎢弱。国旗もフランスとスペインの国旗を併せた、青・黄・赤のカラーリング。このフランス・スペインとの関係がアンドラの特徴。
山が多いため人口密度も低く、国内に飛行場・港・鉄道駅のいずれも存在しない。山道を車で行くしか入国手段はない。経済は金融部門に依存しており、かつてはタックスヘイブンの国だった。
国民は住民のうちわずか3割で、隣国スペイン・フランスから多く移住してくる。公用語はカタルーニャ語で、スペインからの影響がより大きい。ただし、住民の多くはマルチリンガルになる。
特筆すべきはその政治体系で、フランス大統領と、スペインカタルーニャ州ウルヘル地方にいるカトリック司教とが共同で国家元首を務める、世界で唯一無二の二頭政治システム。
(補)ジブラルタル
アフリカとイベリア半島を隔てる小さな海峡をジブラルタル海峡と言うが、ここにある島。地政学上きわめて重要な場所にあり、「地中海の鍵」と言われている。
公式には英国領(イギリスの飛び地)だが、スペインとの領有権問題がある。
人口は3万人強。
更新がいろんな意味で遅くなりました。次回でヨーロッパはラストです。
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