ちょっと日が空きました、お久しぶりです。さこです、月曜日お疲れ様です。今日はベネルクスを紹介します。
なお、これまで「ベルネクス」と言っていましたが、「ベネルクス」でした。
ベネルクスとは、ベルギー・オランダ(ネーデルラント)・ルクセンブルグの3か国のこと。ヨーロッパの真ん中らへんに位置するこの3か国は、小さな国ではあるものの経済力や政治力が強力な国たちである。
多民族の国が多く、公用語が複数あって、多言語でコミュニケーションすることが多い。そういった背景から政治的にも利害が分かれやすいのだが、「ネオ・コーポラティズム」と言われる政治システムでうまく統合し、社会科学の分野でも注目される。多民族の統合は、EUにとっても模範的。それゆえか、EUの機関の本部が多くこのベネルクス3か国に集まっている。EU原加盟国と言われている6か国は、ベネルクス3か国とドイツ・フランス・イタリア。
ちなみに、いずれの国も安楽死を認めているという特徴がある。
歴史的、あるいは国際的な存在感とかに注目しながら見ていきます。
<78.~80.>
78.オランダ(Nederland) 17世紀の商業覇権
左:オランダのイメージ 右:オランダ帝国(クリエイティブコモンズから取得)
英語やオランダ語では「ネーデルラント(Netherland)」で、「オランダ」といっても通じない。オランダとは「ホラント州(Holland)」という1地域の名前である。
「ネーデルラント」 は低地の国という意味。国土の多くが「ポルダー」と呼ばれる干拓地でできており、国土の1/4が標高0メートル以下。ハウステンボスみたいなチューリップや風車のイメージが一般的だが、それらは地理的特質を背景とする。
世界史では、「ゴイセン」と呼ばれるプロテスタントのカルヴァン派が中心となってスペイン帝国から独立し、最先端の商業で興隆したとされる。世界最初の株式会社である「オランダ東インド会社」を中心に、インドネシアなど、巨大な植民地帝国を築いた国。英蘭戦争で敗れるまでの18世紀の世界はオランダの覇権だったと見る人もいるほど。ちなみに、世界最初のバブル(チューリップバブル)もオランダで発生した。
そのオランダ帝国の特徴は、自らが反カトリックの国として独立した経緯もあり、思想・信条に寛容であったことが挙げられる。例えば、インドネシアは現在もイスラム教国であるが(東南アジア編参照)、オランダ植民地時代からイスラム教を積極的に普及させていた。また、鎖国している江戸時代の日本が唯一国交していた欧米の国であるのは、スペイン・ポルトガルと異なり布教活動をしなかったことが理由の一つ。
江戸時代まで、日本ではオランダ語が西洋文化を取り入れる窓口として機能し、「蘭学者」と呼ばれる実務学者がいた。黒船来航のあとの、開国の際もオランダ語通訳を通じて交渉した。
現在でも、非常に小さな人口・国土ながら、優位な立地を活かし経済大国の面影を残している。輸出総額は世界5位。フィリップス、ユニリーバ、ハイネケン、ロイヤルダッチシェル、KPMGなどのブランドはオランダ企業のもの。天然ガスが出る資源輸出国でもある。
驚くことに、アメリカに次ぐ世界2位の農業輸出国。「スマートアグリ」というICTを利用した効率的な農業システムを導入している。有名なのが園芸農業で、世界最大の花市場「アールスメール花市場」は世界の花の4割という占有率を誇る。
また、他国では違法とされていることを合法とした上で、政府によって管理・整備するという、合理主義的政策を取り入れていることもオランダの大きな特色。売春が合法で、「飾り窓」と呼ばれる売春街が有名。麻薬にも比較的寛容で、ソフトドラッグの法規制が緩い。アムステルダムには大麻専用の「コーヒーショップ」がある。
国際法の父グロティウスや、アンネフランクといった有名人がいる。
男性の平均身長183センチの巨人の国。
79.ベルギー EU本部
左はワッフルです。 右はEU旗
ベルギーの首都ブリュッセルにはEUの本部がある。その背景の一つに、ベルギーがもともと多民族共生の進んだ国であることが考えられる。
ベルギーは、フランスから独立した「ワロニア地方」と、オランダから独立した「フランダース(フランデレン)地方」がからなる。話される言語も地域ごとにそれぞれフランス語・オランダ語で、ドイツ語を喋る少数の民族と合わせて、3つの言語グループで政治を構成している(ネオ・コーポラティズム)。南北の経済格差が社会問題になっており、北部のフランダースが豊かである。
世界史的には、オランダが商業で興隆したのに対し、工業で興隆したのがベルギーである。大陸ヨーロッパで最初に産業革命を起こし、近代のスタートはフランス・ドイツより早かった。かつてのプロイセン憲法はベルギー憲法を参考にしていた。ちなみに、日本銀行のモデルはベルギー国立銀行。コンゴとその周辺に植民地を持つ帝国主義国でもあった。
なかでも有名なのがダイヤモンド産業。アントワープでは研磨技術が開発され、世界のダイヤモンド産業の中核として栄えた。現在でも研磨産業では世界シェア3位であり、国全体の輸出の10%にのぼる。
隣国オランダとは共通点が多い。ただしベルギーは、カトリックを中心に(プロテスタントの)オランダから独立した国で、現在も人口の3/4がカトリックである。オランダとの国境付近には、国境が入り組んだ街がある。
フライドポテト発祥(諸説あり)。ほかにもワッフル、チョコレート(ゴディバ)などの食べ物が有名である。世界最大のビール会社もある。
ドイツと国旗が若干似てる。
自転車競技の強豪。
80.ルクセンブルク 一人あたりのGDP世界一*1
左:ルクセンブルク市 右:アルセロール・ミタルのロゴ
ベネルクスの中でも1番小さな国であるが、90年代以降に急激に経済力を手にしているのがルクセンブルグ。
世界一かどうかは統計による(というか、ミニ国家をどれだけランキングに入れるか)が、一人当たりGDPは非常に高い。モナコ・香港・澳門・リヒテンシュタインには劣る。購買力平価でみてもカタール(中東後編を参照)に次ぐ2位。
「アルセロール・ミタル」は、世界1の鉄鋼のガリバー企業で、ルクセンブルクのアルセロール社がオランダのミタル社に敵対的買収された企業。ただし、1970年以降鉄鋼産業は徐々に衰退してきている。
ルクセンブルクの経済力の源泉はタックスヘイブンなどを利用した金融である。外国人が銀行口座を作れる国で、スイスと同様に外国企業の本社・欧州支社が多数ある。ちなみに、お互い内陸国であり共通点も多く、ミニスイスと言う人もいる。しかし近年、OECDとEUの圧力で、タックスヘイブンとしての利点をいくつか失っている。
外資受け入れが盛んなことから、対外債務が非常に多い国。対GDP比6900%と驚異的でダントツ世界一。
国民は9割弱がカトリック。フランス語・ドイツ語・ルクセンブルク語の3つが公用語。ルクセンブルク語はドイツ語に近い。文化面ではフランスとドイツの影響を大きく受けている。何故かは知らんが、ポルトガル人が多く住む(17%)。
世界で唯一の国家元首に「大公」を置く国である。
オランダの書きたいネタが多すぎて、尻すぼみな感じになってしまいますた。
ちょっと更新滞ってましたが、今週中にヨーロッパは網羅できます。
次回は南欧です。
コメント・☆・読者登録などしてくれたら喜びます